読んでて怖くなってしまう短編多数。
中でも気になった2編。
生命式
主人公は、昔の常識/倫理観と、今の常識/倫理観がぐるっと変わった世界にいる。
多くの人は、変わった常識/倫理観を受け入れている。
常識は変わっても、「人間としての倫理観は不変」という思い込みがあるけれど、倫理観もどうとでも変わってしまうかもしれない、という点で、ぞっとしたお話。
素晴らしい食卓
「相手の作った食べ物を食べるって、相手の住んでる世界を信じるってことでしょ。(中略)騙してくれないと食べることができないんだよ」
一番印象に残っているフレーズがこれ。食べ物に限らず、思想すべてがそうだと思う。
価値観の違いで衝突が起こるのは、どちらが正しいのではなく、どちらも正しいと思っている。自分の価値感が正しいのではなく、自分がその価値観の世界を信じているから正しいと思うのかもしれない。
何を信じるかによって、自分にとって正しいことは変わる。揺るがない人もいれば、権威に流される人もいる。やむを得ず自分の価値観を捨てて相手に合わせる人もいる。
自分の価値観を持った上で、それはそれ、相手は相手、と認めるのは簡単なようで、難しいと関じたお話。
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タイトル:生命式
著者:村田沙耶香
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