主人公の椿は、甥っ子で小学生の朔と二人暮らしをしている。
朔の母は、未婚で朔を生んだのち、男と二人で沖縄に住んでいる。
椿は彼とは遠距離恋愛をしている。
「妹の子供がいたら結婚できないのでは?」、「母がいるのに伯母と暮らすのは普通ではない」と世間からは見られがちだ。
この「わたしの良い子」は「普通とは」「良い子とは」を改めて考えさせるような小説だ。
印象に残っているのは、朔からサンタは本当にいるのかと聞かれて答えるシーン。
椿の恋人は、サンタクロースの正体を知ってがっかりした、という「普通」の感覚を持っていた。
椿は、子どものころから、サンタクロースの正体がわかっていても、「お化け屋敷」と同じように楽しめると感じていた。
そこで、思案した結果、朔に以下のように伝える。
「サンタクロースっていうのは人名じゃなくて、大好きな人にプレゼントを上げることとか、そうしたい気持ちのことを言うんだよ」
(中略)
「あのね、誰かにプレゼントをあげたい気持ちや、あげる行為を総称して『サンタクロース』なんだよ。だから、プレゼントをあげて誰かを喜ばせたい、って思う人は、みんなサンタクロースなんだよ。(略)」
正直、「サンタクロ―ス」の捉え方ひとつとっても、0か1かではないという考え方にはっとした。
「普通であること」に縛られると、普通じゃない0か普通である1かしか見えなくなる。0と1は反目しあうかもしれない。
事実は一つでも、事実の捉え方は人それぞれであり、決して、0か1のどちらかではないことに、改めて気づかされる小説だった。
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タイトル わたしの良い子
著者 寺地はるな
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