目覚めると、見ず知らずのサチの住む都心のタワマンと、ワタルの住むアパートの部屋がくっついていた。
サチとワタルの暮らしていた街並がなぜかいびつに連なっていた。
街には2人しかいない。
しかし何も不自由がなく、必要なものが手に入り、痛みなども感じない、時間の感覚もない不思議な空間で、2人は打ち解けていく。
そんな矢先、2人きりになった理由が明らかになる。
そして設けられたタイムリミットまでに残酷な決断をしなければならないことになる…
という話。
この方は一気読みしたくなるので、夜に読み始めるのはやめた方がいい。
サチは生まれも育ちも恵まれている。会社にもコネで入社している。それをやっかむ同僚もいるが、サチ恵まれているが故の葛藤を気遣う同僚もいる。
ワタルは美容師として高い技能を持ち、周囲から一目置かれるが、実は実家の事情を抱え、また、人知れず努力をしている。
そんな2人に共通するのは、相手のほうが価値がある人間だ、と感じていることだ。
サチがワタルに対して
ワタルは人を幸せにできる
と評する。
辛さから逃げたくても、手放したくないなにか大切なものがあるから、人は悩むのだと思う。
たとえ波風が立たなくても、一人では生きていけない、そんな覚悟をさせてくれる一冊だった。
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タイトル 明日、世界がこのままだったら
著書 行成薫
