まずはこれ食べて
原田ひ香さんの小説に出てくる料理は、力強い。
なんてことないメニューでも、弱っている人を少しだけ安心させるような、後ろを向いている人を少し前に振り返らせるような。
何か不思議な力が食べ物にはあるのだと思う。
学生時代に友人同士で起業した医療系ベンチャー企業「ぐらんま」に、新たに家政婦として筧みのりがやってくる。
週3回、洗濯・掃除と夕食・夜食を作るのが、みのりの仕事だ。
みのりが来てからの日々が、登場人物それぞれの目線で描かれてき、次第に直接は登場しない創業メンバの「柿枝」の存在と、「柿枝」に対する葛藤が浮かび上がる。
他のメンバと比べて自身の業務を卑屈に感じる胡雪、
幼少期の経験から、不幸ぶらず、自分の望みをはっきりさせて人と対峙するマイカ、
婚約者の要望もあり転職を悩む伊丹、
学生時代から友達があまりできなかった桃田、
CEO田中の柿枝に対し引け目を感じる思い、
各人が心の中にためていた思いを、
料理を挟んで筧みのりと対話する中で、少しずつ変化させていく。
そして、筧みのりが抱えている秘密と、やろうとしていることも明らかになる。
この本の中では、
筧みのりが、第三者的なフラットな立場から、「ぐらんま」のメンバに
率直な意見を述べることで、新しいものの見方に気づく。
閉塞感で押しつぶされそうなとき、これまでのコミュニティとは違う
第三の相手がいるのは大きいなと感じた。
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タイトル まずはこれ食べて
著者 原田ひ香