「銀河鉄道の父」は宮沢賢治の生涯を、父・清次郎の視点で描いた小説だ。
清次郎は親の代からの質屋を成功させて、比較的裕福な暮らしをしている。
賢治が生まれた当時(明治時代)にしては珍しく、清次郎は賢治生まれたときは大喜びし、賢治が7歳の時に赤痢で入院すると、妻ではなく自身が入院に付き添い献身的に看病するなど、当時では異例の世話を焼いていた。
成績優秀だが家業も継がず、思い付きのように「事業をしたい」と言い出したり(ただし資金源は父と思っている様子)、国柱会に夢中になったりする賢治を、厳しく接しようとするも、仕送りの催促に応じるなど、甘やかしてしまう父。
賢治の妹・トシがなくなった後、賢治は農学校の教師となり、詩や童話を書くようになる。賢治は、これまでの給料をつぎ込んで「春と修羅」「注文の多い料理店」を自費出版するも売れない。教師をやめ、仕送りの無心もせず、貧しく暮らすようになる賢治に、清次郎はお金を援助しようと思ったりもするが、受け取らないだろうと、やめる。
やがて賢治は肺浸潤で亡くなる。
文庫の解説を読み、なるほど、と思った。
門井慶喜さんはインタビューで、清次郎のことを以下のように話したという。
この親子関係に現代性を見出した
厳しさと過保護の間で揺れ動く現代のお父さん
明治・大正の家父長制やムラ社会は、食べるものにも事欠くことがあるような、貧しい時代を生きていくのに必要な日本的仕組みだろう。
衣食住・家族といったものが満たされた裕福な宮沢家だったからこそ、もっと子どもと向き合いたい、と思う「余裕」があったのだろう。
清次郎は、「常識・周囲の目」と「自己の欲求」との間で、葛藤しながらも自身がこうしたい、と思ったことを思い切ってやっている。
自分も、清次郎の父のように、「周囲の目」を優先させず、「自分が後悔しないか」考えて行動したいと感じた
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タイトル:銀河鉄道の父
著者 :門井慶喜
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