何をしていいかわからない、将来の進路に悩む主人公の高校生が、「手紙屋」との文通を通して、「勉強をする意味」を考える話です。
答えは一つではなく、やり取りの中でいろいろな考えが出てきますが、
- もやもや思っていたけどうまく言葉にできなかったこと
- これまで考えたことのない視点
について、いくつか印象に残った内容です。
勉強のマイナス面
勉強も一つの道具です。
ところが、すべての人に万能の道具というわけではない。(中略)
よく考えて「勉強」という道具を使わないと、人を傷つけたり、自分自身を不幸にすることだってなりかねない。
不幸にする=例えば、勉強ができることで人を見下す/勉強以外やらなくて人間関係等が築けない/知識を悪用する…など、確かに、そういった側面は意識したことがなかった。
この本の本質ではないのですが、
「悪用するための勉強を考える人(犯罪者とか)」ではなくとも、「勉強ができることによるマイナス」の面を少しでも見せると、「ガリ勉」とか「勉強だけできても意味がない」とか、たたかれて、揶揄されて、という状況が昔からあるのは、
- 子どもたちは「勉強をしろ」といわれるが、「勉強をする目的があいまい」で「進んでやりたいとは思えない」。
- 勉強ができる人は、勉強面では周囲の教師/大人たちから『認められる』。
- 認められない人にとって「勉強という道具をうまく使えていない」ひとのマイナス面が目に付く。大きな反感を持って、攻撃する。
という面があるのかもしれないな…と思いました。
勉強という道具を使って『忍耐力』を鍛えることができる
(中略)
『自信』を手に入れることもできます。
(中略)
人からものを習うことによって、『素直な心』を学ぶことだってできます。
努力の仕方、生き方が学べる、という点もあると思います
勉強にはできるけど、勉強以外では無理なこと
勉強という道具を使って自分を磨いた人の多くは、大成してから亡くなるまで素晴らしい人生を送ることができます。ところが、サッカーや野球といったスポーツで大成した人の場合、その引退後、つまり残りの半分以上の人生が素晴らしいものかどうかを考えると、必ずしもそうではなさそうですよね。
また、例えば百メートルを十秒で走る選手が、練習を積めば五秒で走れるようになるかというと、それはありえない。そう考えると、どうしても限界があります。もちろん年齢的なピークもある。
頭を鍛えるということに関しては、ここまでいったらもう入りませんといったラインはないんです。おまけに、体を使った競技と違って、一度見についたものはほとんど衰えることなく、一生使えます。
これっは、もやもや思っていたがうまく言葉にできていなかったこと。
努力の仕方を学ぶことができるのはどれも同じ。
勉強ならでは、という視点で改めて言語化され納得。
努力の方向性に優劣はないが、努力から得られる結果には違いがあるってことかなと思いました。
勉強を始めるための 人生の法則
『家に帰ってから最初に座る場所で、自分の人生が変わる』
五分でもいい。大切なのは、最初に座る場所をあなたが勉強する場所にすること。始めてしまえば、あとは何時間やろうがかまいません。
この視点はなかった。
いったん始めたことを途中でやめたくないという気持ち、これは不変なのかわからないけれど、
- なんでもまず始める
- まず始めるためには、「勉強をする場所」にすぐ座る。
形からはいる/習慣化する、それは、実は「楽に気持ちを切り替える方法」なんだと思います。
勉強の目的・意味
「勉強」をどうやって人のために役立てるかという具体的な目標がない人は、勉強という道具を正しく使って成功することはできません。
『人の役に立つ人になる。そのために勉強する』
なぜ勉強をするのかについての一つの納得いく答えを、言葉にして納得できたと思います。
- 「自分が勉強しないと自分が困る」なら、自分が困るだけだからほっといてと思っても、より「自分が勉強しないと周りの人たちが困る」のほうが、勉強する原動力になる
- 子どものころの将来の夢は「自分がかっこよくなりたい、自分が好きなことをずっとしたい」。それが、「人のために役に立つ」という経験を経て、でも自分がどうやったら人の役に立てるかわからなくて、「夢がない」という状態になる
人のためにこう役立ちたい、それに向かってこういう勉強をしていて、こういう知識を身に着けている、と語れる人の夢には説得力がある。
就活の面接でも、志望動機とか聞かれるけれど、結局、人のためにこういうことがやりたい、それに対して自分はどんな勉強をしてきて自分はその経験から学んだことをどう生かせる、ということが、実を伴っているかっていうのが大切なんじゃないかと思います。(就活篇読んでないけれど、就活篇にこういう話が出てくるのかな??)
勉強した経験から得た力や、勉強して身に着けた知識を使ってほかの人を幸せにする。
その考え方に、非常に納得しました。
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タイトル:手紙屋 蛍雪篇
作者:喜多川 泰