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本を読み散らかすだけじゃもったいない!ので、読んだ本を記録します

アレルギーという視点はなかった。「人間アレルギー」

アレルギーというのは、一般的には、過剰な免疫反応であり、排除する必要のないものまで異物と認識し、体が排除や攻撃をする状態のことを指します。

それを、対人関係にもあてはめて「排除する必要のない相手を異物とみなし、心理的に拒絶反応を起こすこと」を、この本では「人間アレルギー」と定義しています。

心の状態と、アレルギー反応との類似点を整理し、「アレルギー状態=人間に対する信頼や愛を失ったり、自分自身さえ確かに感じられない」、を、どう克服するかのヒントが記載されています。

 

人間アレルギーの状態とは

その人の一部であるというだけで、まったく無害な特性や愛すべき点までもが、嫌悪と拒絶の対象となる。結果として、その人の存在全体が憎しみの対象となり、攻撃と排除を招く。さらには、その人と関係するものやその人を連想させるものに対してまで、不快さや拒否感を催す。その気分をひきずることで、まったく無関係なほかの人に対しても怒りや攻撃を向けてしまう。ときには自分の助けになってくれようとしている人までも。 

 

こうした人間アレルギー状態に対していくつか具体的対策が挙げられています。

 

事実と推測を区別する

人間アレルギーがある人は 些細なサインや兆候をすべて悪いほうに解釈し、事実とはかけ離れた思い込みを作り上げる。

(中略)

表情や態度や雰囲気は”事実”と錯覚しやすい。

推測して、勝手に悩んでいる状態ってことですね。

上記の対応策としては

事実と推測を分離したうえで、推測の部分については「しょせん、推測だ。事実かどうかわからない。悪く考えて、悩むのはやめておこう」と繰り返し自分に言い聞かせることだ。 

 そう。自分でそういう考え方のクセをつけるよう努力しないと、いつまでも悩んでも仕方ないことに悩んでしまいます。

また、事実と推測の区別として、「恣意的な関連付けや一般化をやめる」というのも挙げられています。

 

周囲の目は案外ゆるいと知る

自分に周囲の目が向けられているという事故関係づけを抑える必要がある。有効なのは、「人はこっちが気にしているほど、私のことなんか気にしていない」と自分に言い聞かせることである。

 

異物の「本体」を絞り込んでいく。

事実の中でも、直接に害をなす部分と、さほど害のない部分を切り分けて、本当に困る部分は何かを明確にしていく。

 

人間アレルギーを防ぎ、また克服していくのには、二つの能力がカギを握る。

一つは共感性である。単に相手に同調するのではなく、相手の立場に立って気持ちを汲み取る能力だ。(中略)

もう一つが、自己省察力である。自分を振り返ることで、一見相手の問題に見えることも、自分の問題として考えることができる。それが行動の修正につながり、円滑な人間関係にも寄与する。 

 

特効薬なんていうものはなくて、

自分の気持ちを理解する、自分が変わろうとする、

そういう能動的な気持ちを持たないと、何も変わらない(勝手に解決することはない)

と理解しました。

 

そのほか解説のあった両価型については、なかなか難しいことも。(周囲と、本人の自己分析が必要なのかな)

  • 素直に気持ちを出せず、ある部分では本心と反対のことをしてしまう
  • 矛盾したことや筋が通らないことを言い出す
  • 根底にあるのは、愛情を求める気持ち。愛情不足を感じると、自分ばかりがつらい思いをしているという不遇感につながり、それが怒りを生む。
  • 両価型反応に出会ったときは、矛盾を指摘したり責めたりせず、優しくいたわる。拒否されたりひどく傷つくような言葉を返してくるかもしれないが、動じず大きな愛で相手を包んでほしい。

 

克服

人間アレルギーの克服法として、アレルギーと同様、少しずつ慣らすことで異物と認識しなくなることができる、と締めくくられている。

  • 自分が受容され、自分の心をいやすような体験として人とかかわる(奉仕し、助けたり世話をする仕事)
  • 楽しみの場でだけ人とかかわる
  • 場合によっては人と無理やりかかわらず、タイミングを見て人とかかわる

 

人が嫌いというのは、結局自分を変えるしかない。自分がやってみないことにはなんにもならない、ということですよね。

 

当たり前のことなんだけど、どうにもこうにも動けなくて、途方に暮れているとしたら、まずは考え方や行動を少しだけ変えてみる、そのヒントとなるかもしれない、そんな一冊でした。

 

 

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タイトル:人間アレルギー -なぜ「あの人」を嫌いになるのかー

作者  :岡田尊司