短編小説アンソロジー
人類が、現代のような食材を手に入れることができなくなったあとの世界の短編小説集。
中でも一番気になった一編がこちらだ。
切り株のあちらに(著 新井素子)
地球を離れ、新しい星へ国家主導で移民として移り住んだ祖父と孫娘の話。
地球を知る祖父、地球を知らない孫娘。
その星には地球から民間移り住んだ匪賊と呼ばれる人たちもいる。国家に似た後ろ盾を持つ正式な移民に対し、匪賊には食料は十分に行き渡っていない。
正式な移民との間には隔絶が存在する。
そんな中、孫娘は匪賊に命を助けられ、交流を深める中で、食糧分配について思いを巡らす。
感想
孫娘に見える世界は自分の目の前のことであり食料や資源の配分を平等にしたいという素直な思いだ。それに対し、祖父が考えることが1段も2段も深い。祖父が食料の再分配だけではなく、食料を再分配するだけでは収まらず、戦い、人口減少、人類の淘汰、までを見通している。
人は他人の考えを100% コントロールすることはできない。それができるなら、もはやと人としての存在価値も分からないと思う。
全員に沿っての最適解が個人にとっての最適解とはならないことも多々ある。
何かが起こりうるから、現状の問題を諦めると、解決策への蓋をしてしまう可能性がある。
行動する。ただしその時にどんな悪いことが起こるかもしれないと予見する。
失敗しても、それが自然の摂理と諦める覚悟を持つ。
そんな視点を持って、何かに取り組むのが大事と感じた。
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タイトル すばらしき新式食
著者 新井素子、須賀しのぶ、椹野道流、竹岡葉月、青木祐子、深緑野分、辻村七子、人間六度
発行 集英社
